日本語の敬語は1種類だけではない。敬語をマスターしよう
「日本語で何が一番難しいですか」と日本語学習者の方に聞くと、「敬語」という答えが一番に返ってきます。敬語を難しいと思うのは日本語学習者だけではありません。書店に行くと、日本人の会社員向けの「敬語」の本がたくさん並んでいます。日本人からも「敬語」は難しいものと思われているのです。
ですが、「敬語」の仕組みが分かれば、少しわかりやすくなると思います。
今回は「敬語」のお話です。
よくある敬語に関する質問
Q:「敬語」とはなんですか。
A:「敬語」は話す人がその相手(聞く人)に対して敬意を持っていることを表す言い方です。「あなたのことを大切に思っています。あなたを尊敬しています。」という気持ちで使います。
Q:「敬語」は誰に使いますか。
A:①自分より年が上の人
②会社などで自分よりも役職が上の人
③店やホテル、レストランなどのお客様
④よく知らない人や初めてあった人
に使います。
ですが、自分の家族(父母、祖父母、兄姉)には敬語を使いません。
Q:「敬語」にはどんな種類がありますか。
A:敬語の種類は3種類です。
「だれがしていることか」によって使い分けます。
①丁寧語(ていねいご)
「です」「ます」を使って話します。
②尊敬語(そんけいご)
相手、聞き手がしていることを言います。
③謙譲語(けんじょうご)
私、話し手がしていることを言います。
図を見てください。
この図で、上のイラストの人たちがすることを尊敬語で言います。
下の男性のイラストの人がすることを謙譲語で言います。
例えば「話します」の言い方も
「社長は話します」⇒「社長はお話しになります」(尊敬語)
「私は話します」 ⇒「私はお話します」(謙譲語)
のように言い方が変わります。
Q:学校や会社で知り合った人とはいつから「敬語」を「普通の話し方」に変えますか。
A:相手との関係が親しくなったら「敬語」から「普通の話し方」に変える人が多いようです。迷ったときには「です、ます」で話しましょう。
Q:上手に話す自信がありません。間違えると相手に失礼ですか。
A:「敬語」は話すことよりも、「敬語」で話していることがわかることのほうが大切です。お店やレストラン、ホテル、会社の取引先でも、敬語がわからないと相手の人が何を言っているのかよく分からないですね。上手く話す自信がないときは「です」「ます」で話しましょう。
丁寧語(ていねいご)
丁寧語は「です」「ます」「ございます」を使って話すことです。どんな相手に話すときにも、丁寧で礼儀正しい感じがします。敬語が上手く使えないので困っているという人はまず「です」「ます」で話す習慣をつけましょう。
例)
これはおいしい。⇒これはおいしいです。
これを買う。 ⇒これを買います。
わたしのかばんだ⇒わたしのかばんでございます
「これ」「それ」「あれ」「どれ」や「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」も丁寧語があります。
これ・ここ ⇒こちら
それ・そこ ⇒そちら
あれ・あそこ ⇒あちら
どれ・どこ ⇒どちら
例)
客 :すみません。トイレはどこですか。
店員:あちらです。
客 :それはいくらですか。
店員:そちらは1万円でございます。
「だれ」「いくら」の丁寧な言い方もよく使います。
だれ⇒どなた
例)
あれはだれですか⇒あちらはどなたですか
いくら⇒おいくら
例)
このシャツはいくらですか⇒こちらのシャツはおいくらですか
尊敬語(そんけいご)
尊敬語は話す相手の人、聞く人がすることを言います。尊敬語には3つのパターンがあります。
①「れる」「られる」を使う
例)10時にお客様が来られます。
(3グループ動詞)
来(き)ます⇒来(こ)られます
します ⇒されます
(2グループ動詞)
たべます ⇒たべ+られます
おしえます ⇒おしえ+られます
(1グループ動詞)
かきます ⇒かかれます
はなします ⇒はなされます
よみます ⇒よまれます
かえります ⇒かえられます
②「お/ご~になります」
お/ご+動詞ます形+になります
例)社長がかえります ⇒社長がおかえりになります
先生がよびます ⇒先生がおよびになります
社長が説明します ⇒社長がご説明になります
③特別な尊敬語
尊敬語には、特別な言い方、尊敬語だけで使う言い方があります。下の表は、よく使っている特別な尊敬語です。
特別な尊敬語のなかには同じ言い方をするものがあります。
「行きます」「来ます」「います」⇒いらっしゃいます
「たべます」「のみます」⇒めしあがります
尊敬語は3つのパターンのどれかを使って言うことができます。
例)「社長はビールを飲みます」
これを尊敬語でいうと
①社長はビールを飲まれます。
②社長はビールをお飲みになります。
③社長はビールをめしあがります。
ということができます。
④「~してください」の尊敬語
「ここにすわってください」「名前を書いてください」など、相手になにかをして欲しいときの言い方もあります。
お/ご+動詞ます形+ください
例)
すわってください⇒おすわりください
名前を書いてください⇒名前をお書きください
「ご遠慮(えんりょ)ください」は「~しないでください」という意味です。
日本の町の中には「ご遠慮(ごえんりょ)ください」と書いてあるものが、たくさんあります。
例)
おたばこはごえんりょください⇒たばこをすわないでください
携帯電話はごえんりょください⇒携帯電話をつかわないでください
撮影はごえんりょください ⇒写真や動画を撮らないでください
謙譲語(けんじょうご)
謙譲語(けんじょうご)は自分、話す人のすることをいいます。話す人を下に下げて、相手、聞く人を上にする言い方です。
謙譲語の言い方は2パターンあります。
①お/ご~します
お/ご+動詞ます形+します
3グループの動詞 「案内します」「説明します」のように、しますの動詞のときは、「ご」を使います。
例)
社長のかばんを持ちます⇒社長のかばんをお持ちします
私が案内します ⇒ 私がご案内します
てつだいます ⇒ おてつだいします
Aさんを紹介します ⇒ Aさんをご紹介します
②特別な言い方の謙譲語(けんじょうご)
謙譲語にも特別な言い方をするものがあります。よく使う言い方を紹介します。
特別な謙譲語(けんじょうご)にも違う動詞で同じ言い方をするものがあります。
「います」「きます」⇒まいります
「たべます」「のみます」「もらいます」⇒いただきます
「ききます」「(相手のところへ)いきます」⇒「うかがいます」
例)
明日10時に(あなたの会社に)いきます⇒明日10時にうかがいます
(わたしは)山田といいます⇒山田ともうします
TCJでもっと勉強しましょう
敬語は上手く話すことよりも、話している相手の人が言っていることがわかることのほうが大切です。レストランで食事をしたり、買い物をしたりするときに店員が敬語で話していると「何を言っているかわからない」と慌ててしまいますね。
日本語の会話のなかでたくさん出てくる「敬語」もTCJのクラスで学ぶチャンスがあります。TCJの講師といっしょに「敬語」を練習しませんか。
<参考文献>
みんなの日本語Ⅱ(スリーエーネットワーク 2013年第2版)
新日本語敬語トレーニング(アスク 2022年)
敬語の指針(答申)(文化庁 H19.2.2)
NHKベーシック国語敬語表現
敬語おもしろ相談室(文化庁)